米作りにはいくらかかる?7反分の稲作費用とリアルな収支を大公開【2025年版】

お米

「お米って高くなったよね」と言われることが増えました。

でも、農家からすると──実際には「まだまだ安すぎる」というのが本音です。

この記事では、徳島県で7反の田んぼを管理する私が、2025年春時点でかかった稲作のリアルな費用と収入の見込みをすべて公開します。

特に以下の2つの疑問に、数字と現場の声で答えます。

  • お米作りって、実際どれくらいのコストがかかるの?
  • コメ作りって、本当に儲かるの?

農業に興味のある方も、家庭でお米を買う方も、ぜひ一度この“リアル”に目を通してみてください。

  1. 支出計算編
    1. 1反当りの燃料使用量(2025年4月時点)
    2. 耕起・代かき
      1. 使用機械と作業内容
      2. 燃料費の計算
      3. 消耗品・交換部品費用
      4. 合計費用
    3. 育苗
    4. 田植え(元肥含む)
      1. 使用機械と作業内容
      2. 燃料費の計算
      3. 肥料および苗箱施用材
      4. 合計費用
    5. 田んぼ周辺の除草(参考)
    6. 田んぼ内の除草
    7. 追肥および病害虫防除
    8. 収穫から乾燥まで
    9. 土地の固定資産税と農業用水
    10. 【結論①】7反分の米作りにはいくらかかったのか?
  2. 収支計算編
    1. 米の販売収入シミュレーション
      1. 前提:販売単位と価格について
    2. 収量別・収支シミュレーション比較
    3. 農機の減価償却を考える
      1. 農機の購入費用(中古)
      2. 中古農機の減価償
    4. 収支シミュレーション ~理想と現実のはざまで~
    5. 【結論②】コメ作りって、儲かるの?
  3. なぜ“人件費ゼロ”で成り立ってしまうのか
    1. 年間400時間。時給換算してみると…
    2. 400時間の“中身”とは?
    3. 誰かに頼んだら?──もう成立しない
    4. 本当に「成り立っている」と言えるのか?
  4. 【余談】5kgのお米はいくらで売る?農家の手取り実態
      1. メルカリ販売の収支(令和6年度)
      2. 玄米30kgあたりの実収入に換算すると?
      3. もしすべてメルカリで売ったらどうなる?
      4. 「高く見える価格」でも、実は…
  5. UKA農園のこれから──持続可能な米作りのために
    1. 今後の方向性として考えていること

支出計算編

まずは稲作を1年間行うにあたって、どんな項目にどれくらいの費用が掛かるのか?を記述していきます。なお、今後作業が進むにつれて追加で費用が必要となった場合は随時更新していきたいと思います。

1反当りの燃料使用量(2025年4月時点)

各機械の1反あたりの燃料使用量と費用を一覧にしました。
本記事ではこの表をもとに、作業工程ごとの燃料費を計算しています。

機械燃料種別1反あたりの使用量
トラクター軽油約5.71L
田植え機ガソリン約1.0L
コンバイン軽油約4.29L

※燃料単価(2025年4月時点)
軽油:165円/L
ガソリン:185円/L


耕起・代かき

耕うん系作業として、今年は合計で以下のように作業しています。

  • 秋起こし:1回(7反)
  • 春起こし:2回(7反 × 2 = 14反)
  • 代かき:2回(7反 × 2 = 14反)
     →代かきは耕起よりも丁寧に作業するので燃料消費は1.5倍程度(=21反分)

使用機械と作業内容

  • 機械:トラクター(軽油)
  • 作業回数:計5回(代かきは燃費換算で耕起3回分)
  • 延べ作業面積:7 + 14 + 21 = 42反分

燃料費の計算

  • トラクター燃費:5.71L/反
  • 軽油単価:165円/L
    → 42反 × 5.71L = 約239.8L
    → 239.8L × 165円 = 約39,570円

消耗品・交換部品費用

  • ロータリー用ナタ爪:27,610円
  • ボルト10本(1529円)※本来は36本必要だが今回は一部交換

→ 合計:29,139円

合計費用

合計:68,709円


育苗

育苗にかかる主な資材と費用を以下にまとめます。複数年使える資材は耐用年数で割って年換算費にしています。

項目費用備考
たねもみ(20kg)約10,000円毎年購入
床土(山土)5,000円毎年購入
覆土(498円×17袋)約8,466円毎年購入
消毒液(薬剤合計)約1,480円毎年購入
テクリードC×2、スミチオン×1
塩水選用硫安1,750円毎年購入
苗箱(128円×120枚/12年)約1,280円/年耐用年数12年として
毎年10枚更新想定
育苗プール資材(5年)約6,654円/年耐用年数5年と想定
33,270円
保温マルチ(200m→60m)約1,074円200m巻マルチを60m使用
按分計算
ハウス資材(4万円/5年)約8,000円/年耐用年数5年と想定
既存資材のため正式な金額不明
塩水選容器+カゴ(10年)約1,004円/年耐用年数10年と想定
2セットで合計10,032円

合計:約44,708円

〇メモ・補足
育苗プールやハウス資材は破れ・劣化に備えて5年での交換を見込んでいます。
苗箱は年間10枚ずつ交換すると12年で総入れ替えになる想定です。
消毒・浸種に使うタンクやざる、塩水選セットも10年程度は持つ想定で年割り計算。

当園ではコストを抑えるため、苗作りからしていますが、多くの兼業農家では農協から稲苗を購入しています。その場合、1枚当たり1,000円とすると、120枚で120,000円。余裕を見ずにちょうど使い切るようにしても100枚は必要になるので100,000円になります。手間はかかりますが、コストが倍になるのは厳しいので来年も苗作りからやっていくとになりそうです。


田植え(元肥含む)

元肥は代かきのタイミングで施肥したのですが、田植え機と同時(側条施肥)も将来的に考えたいのでこの項で計算するようにしています。

使用機械と作業内容

  • 機械:田植え機(ガソリン)、背負式動力散布機(混合油)
  • 元肥は背負式動力散布機で施用する
  • 田植え直前の苗箱にビルダープリンスを施用する

燃料費の計算

  • 田植え機燃費:1L/反
  • ガソリン単価:185円/L
    → 7反 × 1L = 約7L
    → 7L × 185円 = 1,295円

肥料および苗箱施用材

項目数量単価合計金額
元肥
ニュー稲これだけ
21袋(3袋/反×7反)5,360円約112,560円
苗箱施用剤
ビルダープリンス
6袋(120箱÷20箱/袋)3,380円約20,280円

●ニュー稲これだけ(元肥入り一発肥料)
今年は一発肥料タイプの「ニュー稲これだけ 20kg」を使いました。
1反あたり3袋使用する計算で、7反分なので合計21袋使用しています。
また、今年はこの肥料だけで最後までいけるかにも注目していて、追肥をするかどうかは今後の生育状況次第です。本記事では追肥をすると想定して後ほど計算しています。

●ビルダープリンスグレータム粒剤
田植え直前、苗箱に施用する病害対策の薬剤「ビルダープリンスグレータム粒剤 1kg」を使いました。
これは苗箱に直接ふりかけるタイプの薬で、苗立枯れやいもち病などの予防になります。

合計費用

合計:134,135円


田んぼ周辺の除草(参考)

田米作りでは、田んぼの中だけでなく周囲の管理も非常に重要です。特に田植え前?収穫前までの期間に、周囲の草が生い茂ると以下のような悪影響が発生する可能性があります。

  • カメムシの発生源になり、登熟期の米に被害が出る(斑点米)
  • 雑草が病害虫の温床となり、イモチ病などの発生リスクを高める
  • 草丈が伸びすぎると、風通しや視認性が悪くなり作業効率が落ちる

こうしたリスクを防ぐため、田植え前から収穫までの間に複数回、草刈りや除草剤散布を実施しています。

● 実際の作業内容(2025年度)
刈払い機による草刈り:少なくとも3~4回以上(時期は田植え前・中干し前後・収穫前など)
背負式動噴での除草剤散布(畔・あぜ・田んぼ周辺)

● 金額の算出が難しい理由
この作業には確かに費用が発生していますが、正確な金額を割り出すのが難しいため、今年は「参考費用」として扱います。

  • 刈払い機・背負式動噴の償却費
  • 燃料(混合油など)費用
  • 草刈り用の刃の交換費用(1枚1,000円前後)
  • 使用する除草剤(1回あたり100円~200円程度)
  • 安全装備類の購入費用

これらを合計すれば、1回あたり数千円の費用がかかっていると感じています。しかし、本記事ではこの金額は考えないものとしています。


田んぼ内の除草

水稲栽培では、初期の除草対策がその年の管理負担を大きく左右します。
田植え後すぐに除草剤を投入するケースもありますが、雑草が発芽してからの方がより効果を発揮することも多いため、今年(2025年)は田植えから約1週間後に初期除草剤を散布しました。

項目数量単価合計金額
ゴウワンDLジャンボ(初期)8袋3,520円28,160円
クリンチャージャンボ(追加施用)1袋3,010円3,010円

※ ゴウワンDLジャンボは通常1反=1袋の使用だが、田んぼの形が複雑なため今年は8袋使用。
※ クリンチャージャンボは特にヒエがひどかった場所に限定使用。今年は5月時点では1袋使用。

● 今後の追加除草剤使用の可能性
今後の生育状況や雑草の再発生に応じて、さらなる除草剤の投入が必要になる可能性があります。
予算としては 追加で最大20,000円以内に収めたいと考えています(追記予定)。

合計:約51,000円(想定)
※ 雑草や気象条件によって金額が変動するため、実績に応じて随時更新予定。


追肥および病害虫防除

ここからはまだ実施していない工程ですが、今後の作業計画や費用の見通しとして、現時点での想定金額を出しておきます。
天候や生育状況によって内容は変わる可能性があるため、随時更新していきます。

●追肥(オール16の化成肥料を想定)
現在は一発肥料による栽培中ですが、必要に応じて生育中期?後期に追肥を行う可能性があります。
仮に「オール16(窒素・リン酸・カリ=16:16:16)」を使用するとして計算します。

●病害虫対策(カメムシ防除用:ダントツ粒剤 3kgを想定)
高温多湿な夏場はカメムシの被害が出やすく、出穂期前後に防除剤を投入する予定です。
カメムシは登熟不良(斑点米)の原因にもなるため、的確なタイミングでの対策が重要です。

項目数量単価合計金額
化成肥料(オール16)14袋3,550円49,700円
ダントツ粒剤(防虫剤)7袋3,600円25,200円

※いずれも「使用するとした場合」の想定コストです。生育状況を見ながら必要に応じて使用します。

合計:74,900円(想定)


収穫から乾燥まで

●収穫(コンバイン)
収穫作業はコンバインで行います。主な費用は燃料(軽油)代です。

使用量(目安):30リットル
単価(軽油):165円/L
合計金額:30L × 165円 = 4,950円

※7反収穫分の概算。燃料使用量はやや曖昧なので、後日修正の可能性あり。

●乾燥・もみすり
収穫後のもみは乾燥機での乾燥と、もみすり・計量&袋詰め作業を行います。
ここでは乾燥機にかかる灯油代のみを記載しています。

灯油代(乾燥機)
使用量(目安):20リットル
単価(灯油):120円/L
合計金額:20L × 120円 = 2,400円

電気代
現時点では正確な把握が難しいため、未算出とします。

合計:約7,350円


土地の固定資産税と農業用水

お米作りに必要なコストは、作業や資材だけではありません。農地を所有・管理する以上、土地の固定資産税や水の使用料(農業用水代)といった、毎年かかる“固定コスト”も見逃せない出費です。ここでは、今年の作付け分にかかるこれらの費用を整理しておきます。

・土地の固定資産税
農地の保有には、毎年「固定資産税」がかかります。当園の作付け対象地では、今年の固定資産税の合計が約12,000円でした。
土地ごとの評価額や地目によって多少の差はありますが、農地全体として見れば毎年これくらいの額は最低限必要な出費だと思っておくのが現実的です。

・水費用(農業用水)
水利の整った地域とはいえ、農業用水の安定供給には当然ながらコストがかかります。これもほぼ固定費として毎年必要になる出費です。

項目金額
土地の固定資産税約12,000円
用水費(前期・後期)212,370円(前期:91,900円、後期:89,900円、管理費:30,570円)

合計:約224,370円


固定資産税と水代を合わせると、年間でおよそ30万円以上。
この金額は、たとえ作物がうまく育たなかったとしても発生するため、“作付けするだけで発生するコスト”として必ず考慮する必要があります。


【結論①】7反分の米作りにはいくらかかったのか?

ここまで各工程ごとに分けて費用を試算してきましたが、ここで一度1作期(7反分)にかかるおおよその費用を一覧でまとめてみます。

費目金額(円)※一部想定含む
耕起・代かき68,709
育苗費用44,708
田植え費134,135
除草剤費51,170
追肥・防除想定費74,900
収穫・乾燥費7,350
土地・水費用224,370
合計605,342円(※一部想定含む)

この金額には、減価償却費や人件費は含まれていません
ここでは「実際に出ていく現金」ベースでの費用を集計しました。


収支計算編

米の販売収入シミュレーション

前提:販売単位と価格について

米の販売においては、
 1袋=30kg(玄米)
 1俵=60kg(玄米)
といった単位が使われています。

ネット上の情報は30kg袋と60kg俵が混在しており、価格比較が非常にわかりにくくなっています。
そのため本記事では、直販を前提とした「30kg玄米袋・1袋=12,000円」という販売価格で統一して、収入を試算しています。また、JAの買い取り価格については信頼できる価格情報が見つからなかったため、今回は記載を見送ります。

・想定販売価格
現在の販売単価(直販):
30kg玄米袋あたり 12,000円

  • 現在の収量:12袋/反 × 7反 = 84袋
    → 84袋 × 12,000円 = 1,008,000円
  • 目標収量:20袋/反 × 7反 = 140袋
    → 140袋 × 12,000円 = 1,680,000円

・コメント
現在の収量では7反で84袋=1,008,000円の売上が見込まれます。ただし実際にはここから自家消費分(年間35袋程度)を除く必要があり、現金収入としてはやや少なめになるのが実際のところです。
今後は反当たり20袋の収量を目標としており、その場合は売上1,680,000円が期待できます。収量アップは手間やコストもかかりますが、収支改善には不可欠な要素です。


収量別・収支シミュレーション比較

ここでは、これまでの費用まとめを踏まえたうえで、7反作付けした場合の収支予想を「現実の収量」と「理想の収量」およびその「中間の収量」の3パターンで比較してみます。
※自家・親戚消費(約35袋分)は除外し、全量販売したと仮定

項目現実の収量パターン(12袋/反)中間(16袋/反)理想の収量パターン(20袋/反)
想定収量(7反)84袋(7反×12袋)112袋(7反×16袋)140袋(7反×20袋)
想定売上(12,000円/袋)1,008,000円1,344,000円1,680,000円
支出合計(現金支出)▲605,342円▲605,342円▲605,342円
粗収支(売上-支出)+402,658円+738,658円+1,074,658円
〇コメント
この表は、すべてのお米を販売できた場合の収支を試算したものです。
ただ、実際には自家消費や親戚への配布などで約35袋分を使っており、すべてが現金化されるわけではありません。現実のキャッシュフローとしては、この試算より20~40万円程度は下振れすると見ておくのが正直なところです。

一方で、理想とする1反20袋の収量が実現できれば、ある程度の自家消費を差し引いても、収支に余裕が出るのは明らかです。
その意味でも、「収量を上げる努力」=「生活の安定につながる」という実感があります。
コストを見える化したことで、目指すべき改善の方向もより明確になりました。

農機の減価償却を考える

これまでまとめてきた通り、1年間の稲作には多くの費用がかかります。燃料や部品、水代、固定資産税……それだけでも大変ですが、ここに「機械の減価償却費」を含めると、経営の見通しは一気に現実味を帯びてきます。


農機の購入費用(中古)

●当園の機械は基本「中古」
当園では農業機械は、ほぼ全てを中古で揃えています。
新品で一式揃えるとなると、何百万円~数千万円という費用がかかるため、現実的には難しいからです。

実際に今使っている機械が故障して、すべて買い直すとした場合、現在の中古相場は以下の通り

機械中古想定価格
トラクター800,000円
コンバイン600,000円
田植え機400,000円
乾燥機500,000円
もみすり機200,000円
計量器100,000円
合計2,600,000円

中古農機の減価償

●税務上の建前:中古は「2年」で償却
確定申告のルールでは、当園が購入するようなレベルの中古機械は耐用年数2年になってしまいます。
つまり、例えば80万円のトラクターなら、1年あたり40万円の減価償却費がかかる計算です。

でも、それでは赤字が大きくなりすぎて、現実と合わなくなってしまうのが実情です。

●実際の処理:5年償却で申告中
そこで当園では、独自に5年償却で計算し、確定申告しています。
これは税務署と話をした上で、経営上の実態に合わせた運用として認められているものです。

この場合、2,600,000円 ÷ 5年 = 年間52万円の費用として計上しています。

●本音は…「10年使えなきゃ無理
正直な話、5年でもまだ短すぎるというのが本音です。
現場では10年、15年と修理しながら使い続けることが当たり前。
そうでなければ、収支が成り立たないのがリアルです。

実際に農業をしている感覚としては、以下のようなイメージです

償却年数年間減価償却費(円)コメント
2年1,300,000税務上の建前。収支が大幅赤字になる可能性大。
5年520,000現在の申告ベース。多少は現実に近づくが、それでも厳しい。
10年260,000本音に近い運用年数。現場感覚ではこのくらいが最低限。
15年173,333長期使用を前提とした最低ラインの目安。これくらいでようやく収支が安定。

〇コメント
帳簿の数字だけを見れば「減価償却で赤字」となってしまうかもしれません。
でも現実には、中古機械を修理しながら長く使うことで、なんとか農業を続けているという人も多いはずです。

収支シミュレーション ~理想と現実のはざまで~

ここでは、現在の収量(12袋/反)と、目標とする収量(20袋/反)での収支予想を比較してみました。さらに、機械を使う年数を2年・5年・10年・15年としたときの、年間償却費の違いを加味したパターンも載せています。

■ 想定収入と費用の比較表

項目12袋/反(現状)16袋/反(中間)20袋/反(目標)
粗収入1,008,000円1,344,000円1,440,000円
年間費用▲605,342円▲605,342円▲605,342円
償却費(2年)▲1,300,000円▲1,300,000円▲1,300,000円
償却費(5年)▲520,000円▲520,000円▲520,000円
償却費(10年)▲260,000円▲260,000円▲260,000円
償却費(15年)▲173,333円▲173,333円▲173,333円
収支(2年償却)▲897,342円▲561,342円▲225,342円
収支(5年償却)▲117,342円218,658円554,658円
収支(10年償却)142,658円478,658円814,658円
収支(15年償却)229,325円565,325円901,325円

※収支=粗収入 ー(年間費用 + 償却費)

〇コメント
正直なところ、現実の収量(12袋/反)のままだと、機械の耐用年数を5年で見積もっても赤字です。

確定申告では当園が買うレベルの中古機械の法定耐用年数は「2年」となってしまい、それに倣うと年間の償却費は130万円にもなってしまいます。こうなると、どれだけ手間をかけても数字上は真っ赤っか。
実際には10年、15年と使わないと農業を続けるのは難しく、現場では「壊れた部品だけ直しながら10年以上使い続ける」のが当たり前。数字と現実のギャップを、ここに如実に感じます。
〇自家消費についても補足
この収支シミュレーションは「収穫したすべてのお米を販売した場合」を前提としています。しかし実際には、自家消費分や親族への贈答用などがあり、現金収入として得られる金額はもう少し少なくなります。
つまり、現実にはここで示した「黒字ライン」を超えるのはさらにハードルが高くなるということ。だからこそ、理想の収量(20袋/反)を目指す意義があると思っています。

【結論②】コメ作りって、儲かるの?

この記事の結論として、「結局、米作りは儲かるのか?」という点にフォーカスしてまとめます。

前提条件は以下の通りです:

  • 7反を作付けしている兼業農家
  • 種もみを購入し、苗は自前で育苗
  • 収量は12袋/反・16袋/反・20袋/反の3パターンで試算
  • 販売単価は1袋(30kg玄米)あたり12,000円で全量販売した場合
  • 農機はすべて中古品でそろえ、10年使える前提で減価償却

この条件で試算した収支は以下のとおりです:

項目12袋/反(現状)16袋/反(中間)20袋/反(目標)
粗収入1,008,000円1,344,000円1,440,000円
年間費用▲605,342円▲605,342円▲605,342円
償却費(10年)▲260,000円▲260,000円▲260,000円
収支(10年償却)142,658円478,658円814,658円

この表を見て分かる通り、現在の収量ではほぼ利益は出ていません
しかし、収量を上げることができれば、数十万円規模の黒字も見えてくることが分かります。

ただし──
この収入は、3月の種まき準備から9月の収穫・乾燥まで、約7か月かけてようやく得られるものです。

さらに、収量を上げるには元肥や追肥、土壌改良といったコストが追加で必要になることも少なくありません。
そのため、「表にある金額=手元に残る利益」だとは限らず、そこにもまた難しさがあるのです。


なぜ“人件費ゼロ”で成り立ってしまうのか

稲作の収支を見て「少し黒字が出ているなら、いいんじゃない?」と思った方もいるかもしれません。でも、ここで忘れてはいけない前提があります。

それは、この黒字には“人件費が一切含まれていない”ということです。


年間400時間。時給換算してみると…

3月から9月まで、7か月にわたって積み重ねた作業時間は、ざっくり約400時間
これを時給に換算すると、以下のようになります。

収量(反)年間収支(10年償却)時給換算
12袋(現実)142,658円357円/時
16袋(中間)478,658円1,197円/時
20袋(理想)814,658円2,036円/時

実際、10aあたりの平均作業時間は35〜40時間程度というデータもあります。
それで言えば、7反であれば約280時間前後が一般的な作業時間とされるのかもしれません。

ただし、当園は兼業農家であり、作業できるタイミングは限られます。
また、天候に左右されたり、機械の性能や経験なども影響してきます。

そうした条件下で、なんとか捻出した時間が400時間だった─というのが今回の数字の背景です。

一見すると、理想収量なら“それなりの時給”に見えるかもしれません。
しかし──この400時間の中身を見れば、その数字の意味が変わってきます。


400時間の“中身”とは?

  • 3月後半〜4月は、土日はすべて8時間以上の作業
  • GWは連日10時間以上の作業(1日だけ休めた)
  • 田植え後は、朝・夕に毎日田んぼの見回り
  • 雨が降れば作業不可。前日が雨でも田んぼは使えない
  • 作業できないとすぐスケジュールが崩れ、最悪“収穫遅れ”で8袋/反になった年も

つまりこの400時間は、単に「作業にかかった時間」ではありません。
晴れ間を見て、休日を削って、朝夕のすき間時間を積み重ねて──ようやく確保した時間です。

本業や天気の制約に振り回されながらも、なんとか捻出してきた400時間。
その重みを考えると、「時給2,000円」と言われても、正直ちょっと違う気がしています。

まあ、今は時給357円なんですけどね(笑)


誰かに頼んだら?──もう成立しない

もしこの作業を、外部の労働者に頼んだとしたら。
たとえば1時間1,500円で依頼したら、400時間で60万円かかります。

でも、その費用はどこにも組み込まれていない。
だから、“人件費ゼロ”でやらないと成り立たない──そんな構造になっているのです。


本当に「成り立っている」と言えるのか?

収益が出ているように見えても、人に頼めない・家族で無償でやらないと成り立たない構造は、長く続けるには厳しいものです。

農業に若い人が入ってこない理由。
家族の負担が大きくて継がれない理由。
それらの背景には、この「人件費が出せない仕組み」が深く関係しているのではないでしょうか。


“人件費を払える農業”にしない限り、本当の意味で持続可能な農業は実現できない。

これは、自分自身にも常に問い続けているテーマです。


【余談】5kgのお米はいくらで売る?農家の手取り実態

本記事では1年間の収支について、現実と理想の両面から見てきました。
ここでは余談として、当園がネット販売をした際の価格をもとに、「5kgあたりいくらの利益が出ているのか?」を考えてみます。


メルカリ販売の収支(令和6年度)

たとえば、メルカリで販売した精米済み4.7kgの価格は:

項目金額
販売価格3,550円
販売手数料(10%)▲355円
送料(メルカリ便)▲850円
梱包資材▲250円
精米費用▲200円
実収入1,895円

つまり、消費者が支払った金額の約半分しか、農家の手元には残りません。


玄米30kgあたりの実収入に換算すると?

  • 玄米30kg → 精米後 約27kg
  • 5kg袋にすると → 約5.7袋
  • 実収入:1,895円 × 約5.7袋 ≒ 約10,800円

つまり、玄米1袋(30kg)あたりの実収入は約10,800円
これまでの収支試算では「1袋=12,000円」としていたため、実際はそこからさらに10%ほど少ない金額が手元に残ることになります。


もしすべてメルカリで売ったらどうなる?

仮に「全量をメルカリ販売(実収入10,801円/袋)」した場合:

  • 収量:12袋/反 × 7反 = 84袋
  • 収入:10,233円 × 84袋 ≒ 907,284円
項目金額
粗収入907,284円
年間費用(実費)▲605,342円
粗収支+301,942円
機械償却(10年)▲260,000円
最終収支+41,942円

「高く見える価格」でも、実は…

スーパーやネットで「お米って高いなあ」と感じる方もいるかもしれません。
でも、その裏側では──

見た目の価格が高くても、実際はほとんど赤字の世界。


正直、うちは収量が多い方じゃありません。
天候もあるし、自分の技術の未熟さもあると思っています。
だから「下手なんじゃないの?」って言われたら、ぐうの音も出ません。

でも、それでも精一杯やって出せる米の価格が、4.7kg 3,550円で赤字スレスレ。

高く売りたいんじゃないんです。
ただ「ちゃんとやってる人間の現実」を知ってもらいたい。
それが、この記事を書いた一番の理由かもしれません。


UKA農園のこれから──持続可能な米作りのために

ここまでの内容を見て、「米作りってこんなにお金がかかるのか」と驚かれた方も多いかもしれません。正直に言うと、現時点では稲作だけでは赤字です。

それでも、私たちは田んぼを耕し、苗を育て、収穫し、お米を届け続けています。

これからどうするのか──それが次の課題です。


今後の方向性として考えていること

  • まずは今ある7反の田んぼで収量を上げる
     → 品種や肥培管理の見直し、改善を継続中です。
  • 耕作放棄地が増えたときに、少しずつ規模を拡大する
     → 高齢化や後継者不足で出てくる田んぼを、無理なく引き継ぐ形。
  • 野菜づくりにも力を入れていく
     → 現在も栽培中。複数の収入源を持つことで安定性を高めています。

ただし、専業農家としてやっていくには、今の制度や価格ではリスクが大きすぎるのが現実です。
だから私は「兼業農家」として、お米や野菜づくりを続けながら、できる限り資金も確保していく方針です。

農業の未来は簡単な道ではありません。
でも、自分の作ったお米を「おいしい」と言ってくれる人がいる限り、UKA農園として、これからも挑戦を続けていきます。

正直、うちは小規模な兼業農家です。
大規模農家のような効率的な運営や、理想の収量をすぐに実現するのは、簡単なことではありません。

もしかしたら、無理かもしれない──それもわかっています。

それでも、先祖代々守ってきた土地を大事にしたい。
すこしでも可能性があるなら、挑戦してみたい。

たぶん、それが自分が農業を続けている理由の“芯”なのだと思います


この記事を最後まで読んでくださった皆さんに、心から感謝します。
そしてもしよければ、これからも時々、UKA農園を覗いてみてください。

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