「あきさかり」というお米、聞いたことはありますか?
徳島県を中心に、一部の地域で育てられている品種で、実はじわじわと人気を集めています。
UKA農園では、味の良さと栽培のしやすさから、あきさかりを選んで育てています。
つやつやと輝く炊きあがり、もちもちとした食感、そしてさわやかな甘み──
毎日食べても飽きないおいしさで、家庭用はもちろんお弁当にもぴったりのお米です。
この記事では、農家としての実体験も交えながら、
あきさかりの味・栽培の特徴・他の品種との違いなどをお伝えします。
あきさかりとは?

- 「あきさかり」は、徳島県で広く栽培されているお米の品種で、県の推奨品種にも選ばれています。味の良さと栽培のしやすさを両立したバランスの良い品種で、県内の多くの農家が主力品種として育てています。
- このあきさかりは、コシヒカリとキヌヒカリの良いところを引き継いだ品種です。コシヒカリ譲りの豊かな甘みと粘り、キヌヒカリの炊きあがりの美しさや扱いやすさを併せ持っており、「毎日食べても飽きない味」を実現しています。
- 実際、令和元年(2019年)には徳島県産あきさかりが米の食味ランキングで最高評価の『特A』を獲得。これは全国的にも高く評価された証拠であり、徳島の土壌や気候、そして農家の技術があきさかりにマッチしていることを物語っています。
- 徳島の気候は温暖で日照も多く、吉野川の清流に恵まれているため、粘りと甘みのあるあきさかりが育ちやすい環境にあります。そうした地域性とあきさかりの特性がかみ合い、毎年安定しておいしいお米が収穫されています。
味の特徴
あきさかりは、炊きあがりの美しさがとても印象的なお米です。ふたを開けた瞬間、つやつやと光る粒がふっくらと立ち上がり、「おいしそう」という気持ちにさせてくれます。
味は、やさしい甘みがありつつも、どこかさわやかさもある上品な印象。粘りもモチモチ感もちょうどよく、重たすぎず、毎日食べるお米としてちょうどいいバランスです。
個人的な話ですが、私はサラリーマンとして働きながら米作りをしていて、平日のお昼ごはんは毎日お弁当です。炊き立てと比べれば、もちろん冷めたごはんは風味が落ちます。でも、「冷めてもおいしいか?」という問いに対して、正直、どんなお米だって炊き立てが一番だと思うんです。
ただ、あきさかりは冷めてもベタつきすぎず、硬くなりすぎることも少ないので、おにぎりやお弁当でも食べやすい。冷蔵庫で冷やしすぎたらさすがに固くなりますが、それはどんな品種でも同じですよね。そういう意味でも、あきさかりは普段づかいにちょうどいい、おおらかなお米だと思っています。
おすすめの食べ方
あきさかりは、どんなおかずにもよく合う万能型のお米ですが、個人的に印象に残っているのは、小魚の佃煮を乗せて食べたときです。
焼肉やからあげのようなガッツリ系はもちろん間違いないんですが、佃煮のように甘辛い味付けのものと組み合わせたとき、あきさかりのやさしい香りや甘みがちょうどよく引き立つんですよね。
あのとき食べた佃煮には、たぶん山椒だと思うんですが、緑色の小さな玉が入っていて、それがまたいいアクセントになっていました。ピリッとした香りと、小魚の旨み、そしてあきさかりのしっとりとした食感がすごくバランスよくて、思わず「これはうまいな」と声に出るくらいでした。
何杯でも食べられるというよりも、一杯で「うまかった」としみじみ感じる満足感。
そういう食べ方ができるのも、あきさかりの良さなんだろうなと感じています。
栽培のしやすさと特徴

あきさかりは、農家にとっても扱いやすい品種です。特に徳島のように気象の変化が激しい地域では、その特性が非常に助けになります。
まず大きな強みは、背が低くて倒伏に強いこと。
徳島は台風の通り道になることもありますし、大雨と強風が重なるような日も多くあります。コシヒカリのように背の高い品種だと、そうした気象で稲が倒れてしまいがちです。倒れた稲は土に接して籾に汚れがつき、品質が落ちるだけでなく、コンバインでの収穫も難しくなるため、非常に厄介です。
その点、あきさかりは最後までしっかり立っていてくれるので、収穫までのリスクが少ないのが大きなメリットです。
さらに、高温障害にも強いとされています。ここ数年、徳島の夏はとにかく暑く、猛暑日も珍しくなくなってきています。そんな中でも品質が安定しやすいのは、あきさかりの大きな魅力です。
ただし、いくつかのデメリットもあります。
ひとつは、コシヒカリよりも栽培期間がやや長めであること。
もうひとつは、株が太く、稲刈り後に後作(野菜など)を予定している場合には根や茎が残って邪魔になることです。
さらに、米作り専門の農家にとっても、翌年の田植え時に“浮き藁”として出やすいという特徴もあります。ただ、秋のうちに一度しっかり耕起しておけば、翌春には問題なく作業が進められるので、手間は少し増えるものの大きな障害とは言えません。
あきさかりと比べたい!主要品種の比較表
日本には数多くのお米の品種があり、それぞれに味や食感、育てられている地域に違いがあります。
ここでは、あきさかりと並んでよく名前を見かける代表的な品種を、比較しやすいよう一覧表でご紹介します。
ご自分の好みに合いそうなお米を探すヒントになればうれしいです。
※農水省やJAなどの資料を参考にしつつ、自分なりの視点でまとめました。感じ方には人それぞれ違いがあるので、目安として見ていただければ嬉しいです。
見た目 | 食味 | 粘り | 炊きあがり | 冷めた時 | 栽培特性 | 主な産地 | 誕生年 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
あきさかり | 炊きあがりはつややかでふっくらとした印象 | 甘みがあり、 爽やかな後味 | もちもち感があり、 程よい粘り | 粒感がしっかりしていて美しい | 冷めても味の落ち込みが少なく、お弁当にも向く | 背丈が低く倒伏に強い。高温障害にも比較的強い | 徳島県、福井県、近畿・中国地方の一部 | 2007年(福井県) |
コシヒカリ | 炊きあがりがつやつやで、粒揃いも良い | 甘みと旨味が強く、 濃厚な味わい | 非常に強い。 もちもち感が特徴的 | 香りがよく、 ふっくらとやわらかい | 粘りが持続し、おにぎりやお弁当でもおいしい | 味は良いが、倒伏しやすく、高温障害に弱い傾向がある | 新潟・福井・石川・富山・長野・滋賀・福島・茨城など全国各地 | 1956年(福井県) |
キヌヒカリ | 絹のような白さと光沢が特徴(名前の由来) | あっさりとした味わい、 くせが少なく毎日食べやすい | やや控えめ。もっちり系より「さっぱり系」が好きな人に人気 | 白くつやがあり、 粒感が立ちやすい | べたつきにくく、弁当やおにぎりにも合う | 耐倒伏性・耐病性が強く、安定生産しやすい | 近畿地方・中部地方(滋賀・京都・奈良・愛知など) | 1988年(滋賀県) |
あきたこまち | 粒がやや小ぶりで透明感があり、 炊きあがりはつややか | 上品な甘みで、あっさりとした味わい | ほどよい粘りでバランスが良い | ふっくらと柔らかく、香りは控えめ | パサつきにくく、おにぎりやお弁当に向く | コシヒカリに比べて倒伏にやや強く、育てやすい | 秋田県を中心に、東北地方や関東地方など | 1984年(秋田県) |
ひとめぼれ | 粒ぞろいが良く、 炊きあがりはつややか | 優しい甘みとまろやかな味わい | 粘り・やわらかさ・弾力のバランスが良い | ふっくらとしていて香りも良い | 冷めても食味が落ちにくくお弁当にも向く | 耐冷性があり、寒冷地でも栽培しやすい | 宮城県・岩手県を中心に東北~関東で広く栽培 | 1991年(宮城県) |
ななつぼし | 炊きあがりは 白くてつややか | あっさりとした味わいでクセがない | 控えめでさらっとした口当たり | 粒立ちが良く、さっぱり系 | 冷めてもパサつきにくく、おにぎり・お弁当に適している | 冷涼な気候に強く、北海道で安定して収量が取れる | 北海道(特に道央・道南) | 2001年(北海道) |
農家としてあきさかりを育て、食べてきた私自身も、
他の品種との明確な違いを感じることは正直少ないです。
外食やお弁当で出されるお米が何の品種かを意識することはほとんどなく、
多くの人が「おいしいかどうか」で判断しているのではないでしょうか。
実際に、あきさかりを食べてくださった方からは、
「甘くてもちもちしてる」「冷めてもおいしい」「おにぎりにしたらおいしかった」
といった声をいただくことが多く、それが何よりの証拠だと感じています。
徳島で育つあきさかりの魅力
全国各地で栽培されている「あきさかり」ですが、徳島の自然環境と組み合わせることで、その持ち味がさらに引き立つと私は感じています。
■ 台風や大雨に強い、安心して育てられる品種
徳島は太平洋側に面しており、台風や大雨の影響を受けやすい地域です。
風の強い日が続くと、背の高い品種はどうしても倒れてしまいます。稲が倒伏すると、土に触れた籾が湿気や土のにおいを吸ってしまい、品質に悪影響を及ぼします。また、コンバインでの収穫作業も非常に大変になります。
その点「あきさかり」は背丈が低く、倒伏に強いため、徳島のような気候でも安心して育てられます。育てる側としては、非常にありがたい品種です。
■ 高温障害にも比較的強い
近年の気温上昇も、米づくりには大きな課題です。登熟期(実がふくらむ時期)に気温が高すぎると、お米の表面が白く濁る「白未熟粒」が増え、味や見た目にも影響します。
その点でも、あきさかりは高温条件下でも安定した品質が期待できる品種。
温暖な徳島の気候との相性が良く、暑い年でもきれいな米が収穫できるのは、大きな魅力だと感じています。
■ 豊かな水と土が引き出す「つや」と「甘み」
私の田んぼは、吉野川の流域にあります。吉野川は四国三郎とも呼ばれ、豊富な水をもたらしてくれる大河です。その水と肥沃な土に育まれてできた「あきさかり」は、炊き上がったときのつやが特に美しく、香りもよく立ちます。
粒は小さめながら、もちもち感と甘みのバランスがよく、ご飯だけで食べても「うまい」と思える仕上がりになります。
■ 栽培面での小さな課題も
もちろん、育ててみて感じる短所もあります。
たとえば、あきさかりは株が太く、コシヒカリよりも栽培期間が少し長めです。そのため、後作で野菜を育てようとすると、片付けの際に少し手間がかかることがあります。さらに、翌年の田植え時に“浮き藁”として残っていると、作業の妨げになることも。
ですが、秋のうちにしっかり耕起しておけば、大きな問題にはなりません。むしろ、こうした点も含めて、「真面目に育てればしっかり応えてくれる」そんな品種だと思っています。
さいごに:あきさかりを育て、食べて思うこと
「あきさかり」は、徳島の自然環境にもよく合い、見た目・味・育てやすさのバランスがとれた品種です。
派手さはないかもしれませんが、実直で、毎日食べても飽きのこない、そんなごはんだと感じています。私自身、農家として毎年あきさかりを育て、家族で食べ続けています。炊きたてはもちろん、冷めても十分おいしい。
おかずを選ばず、毎日の食卓をしっかり支えてくれる、そんな安心感のあるお米です。
おすすめしたいのは、こんな方
・ごはんの味にこだわりたい方
→ つや・甘み・もちもち感のバランスがよく、白ごはんだけでも満足できます。
・毎日食べる主食だから、飽きないお米を選びたい方
→ あきさかりはクセがなく、どんなおかずにも合う万能タイプです。
・四国・徳島を応援したい方
→ 吉野川の恵みを受けて育った、地元農家の想いがこもったお米です。
あきさかりに興味がわいたら
あきさかりの魅力、少しでも伝わったでしょうか?
炊きたてのつや、さわやかな甘み、毎日食べたくなるもちもち食感──
これはぜひ、実際に味わっていただきたいお米です。
私の育てたあきさかりは、秋の収穫後にメルカリで新米として販売しています。
販売が始まりましたら、このページやSNSでお知らせいたしますので、ぜひ楽しみにお待ちください。
🍙 ごはんが好きな方にこそ、一度食べてほしい。
自然の恵みと農家の想いが詰まった、そんなお米です。
えんちょうの本音