「ばれいしょ」って、正直よく分からない。。。 というのが、この記事を書き始めたきっかけです。
小さい頃、祖母が「ばれいしょ」と言っていたのを思い出します。
「なにそれ?」と母に聞いたら、「じゃがいものことだよ」と教えてくれたのですが、なんとなく腑に落ちないままでした。
じゃがいもの品種の名前なのか?それとも男爵イモの別称?何か特別な意味があるのか?
大人になって農業に関わるようになっても、どこかモヤっとしたまま。
そこで今回は「ばれいしょ」とは一体何なのか、自分でも納得がいくまでちゃんと調べてみました。
ばれいしょ?その正体とは
まず結論から言ってしまえば、「ばれいしょ」はじゃがいものことです。
もっと正確に言うなら、「ばれいしょ」はじゃがいもの別名であり、特に農業分野や公的文書で使われる言葉です。農林水産省の資料や、種苗法に関連する文書などでは、じゃがいものことを「馬鈴薯(ばれいしょ)」と表記していることがよくあります。
例実際、農林水産省のページでじゃがいもの品種を調べてみると、「じゃがいも」という単語は使われておらず、「和名:バレイショ種」といった表記が見られます。
ちなみに「馬鈴薯」という漢字は、芋の形が馬の首に付ける鈴(馬鈴)に似ていることから来ているとも言われています。
ちょっと風流ですが、普段の暮らしではなかなか耳にしませんよね。
「ばれいしょ」と「じゃがいも」の使い分け
「ばれいしょ=じゃがいも」だと分かったところで、気になるのが「なんで呼び名が2つもあるの?」という点。
どっちが正式名称なのか、統一してくれればいいのに…と思う方も多いと思います。
実はこの違いは、「和名」と「一般名」の違いです。
例えば、植物には「学名」と「和名」と「通称」があるように、じゃがいもも複数の呼び方を持っています。
- 「ばれいしょ」は植物学上の和名で、公的な文書や制度ではこちらが使われる
- 「じゃがいも」は日常的な呼称として親しまれている
たとえば種苗法や統計資料では「ばれいしょ」という表記が用いられています。一方で、スーパーの野菜売り場やレシピ本では「じゃがいも」。
このように、目的や文脈に応じて自然と使い分けられているのが現状です。
「ばれいしょ」って品種名とは違うの?
「ばれいしょ=じゃがいも」であることは分かったけれど、実際の品種名との違いはどうなっているのか、少し混乱する方もいるかもしれません。
たとえば、農林水産省の品種登録ホームページでじゃがいもの品種を検索すると、「ばれいしょ(きたあかり)」「ばれいしょ(ニシユタカ)」といった形で登録されています。
これは、作物としては「ばれいしょ(じゃがいも)」であり、カッコ内にあるのが具体的な品種名である、という意味です。
つまり、
- ばれいしょ:作物名(分類上の呼称)
- ( )内:具体的な品種名(ニシユタカ、とうや、きたあかりなど)
という関係になります。
なお、男爵薯やメークインといったよく知られた品種については、品種登録データベースで検索しても出てこないことがあります。
これはおそらく、これらが比較的古くから栽培されてきた品種であり、現在の品種登録制度(1960年代にスタート)以前に存在していたためではないかと考えられます。もしくは、過去に登録されていても、登録期限が切れて抹消されている可能性もあります。
「出てこないから正式じゃない」というわけではなく、制度上の時期や手続きの問題であるということは押さえておきたい点です。
さいごに
「ばれいしょ」という言葉には、少し昔っぽさや専門用語らしさを感じるかもしれません。
でも、その響きには日本の農業の歴史や制度としっかり結びついた背景があります。
普段は「じゃがいも」と呼んでいても、農業に関わったり、栽培品種を調べたりするうちに「ばれいしょ」という言葉に触れる機会は多くなります。
この2つの言葉は、どちらが正しい・間違いという話ではなく、「場面によって自然に使い分けられている言葉」なんだと理解しておくと、とてもスッキリするはずです。
そして何より、「ばれいしょ」という言葉の背景を知ることで、じゃがいもという身近な食べ物に対する見方もちょっとだけ変わってくるかもしれません。
今後もし「ばれいしょ」という言葉を見かけたとき、この記事のことをちょっとでも思い出してもらえたら嬉しいです。